読書; 社会理論

排除型社会: 他者を本質化する

この章では多文化主義をキーワードに、存在論的不安の増大の帰結について検討が加えられる。図式的に示せば、存在論的不安の高まりは多文化主義を誘導し、それが本質主義を強化することで社会的排除を誘発する火種となる、とまとめることができる。この問題…

排除型社会: カニバリズムと過食症

この章ではレヴィ=ストロースの「人間を飲み込む社会と吐き出す社会」という概念を手掛かりに前章につづき、現代社会の分析がなされる。 クロード・レヴィ=ストロースが『悲しき熱帯』で提案した、包摂型社会と排除型社会の類型は、多くの社会評論家を魅了…

排除型社会: 後期近代における犯罪と不協和音

この章の目的は後期近代における生活領域のさまざまな部分の変化と連動して、犯罪と犯罪被害のとらえ方が変化し、科学としての犯罪学そのものが変わっていった様子を考察することである。「犯罪学の発展を理解するには、犯罪学を、アカデミズムの外側にある…

排除型社会: 包摂型社会から排除型社会へ

排除型社会―後期近代における犯罪・雇用・差異作者: ジョックヤング,Jock Young,青木秀男,伊藤泰郎,岸政彦,村澤真保呂出版社/メーカー: 洛北出版発売日: 2007/03メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 56回この商品を含むブログ (52件) を見る この章の課題は…

リキッド・ライフ: 個人

個性的であろうとすることはアポリアである。現代社会では、誰もが個性的であろうとするよう枷をはめられている。個性的であることを拒否することに対して、社会は寛容な態度を示してはくれない。 個人志向社会では、誰もが個性的でなければならない。少なく…

リキッド・ライフ――現代における生の諸相

リキッド・ライフ―現代における生の諸相作者: ジグムントバウマン,Zygmunt Bauman,長谷川啓介出版社/メーカー: 大月書店発売日: 2008/01/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 101回この商品を含むブログ (16件) を見る バウマン三冊目。本書も基本的には…

コミュニティ――安全と自由の戦場

コミュニティ 安全と自由の戦場作者: ジグムントバウマン,奥井智之出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/01/08メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 131回この商品を含むブログ (29件) を見る 読んでみた。グローバル化によって、すべての人間に移動の自由…

バウマンにとっての近代二型

訳者あとがきには、バウマンの思想的立場はモダニストであって、(本文からも読み取れるが)ポストモダンの諸現象に批判的であることは明白、とある。『リキッド・モダニティ』という本書のタイトルにも、古い近代への回帰への期待が込められているという。 …

リキッド・モダニティ: 共同体

共同体論は、液状化する近代のプロセスに対する当然の反応としてあらわれたものだ。液状化のなかで、個人の安定や安全に対する保障は失われていったが、個人的責任の規模はかつてないほど大きくなった。私的自由の追求のために、他者との絆が弱くなることは…

リキッド・モダニティ: 仕事

前進・進歩というのは過去の足跡のなかに確かめるものではなく、いま、この瞬間に生きている人間が担うべきことだ。前進するためには、「いま」をしっかりとつかんでおく必要がある。そして、実際に前進をおしすすめるためには、仕事・労働に従事するという…

リキッド・モダニティ: 時間/空間(続き)

時間と空間は、かつて人間の生活・労働のなかでほとんど同一のものとして扱われていた。一定の時間に移動できる距離が「空間」で、その移動にかかるのが「時間」だ、といったように。それが、人間や動物の足よりも速く移動することができる乗り物が発明され…

リキッド・モダニティ: 時間/空間

連帯と絆が崩壊した流動的近代にあって求められているのは、共同体であるという。ここでいう共同体には、差異はあってもそれは安全性が保証されたものであり、対立を生んだり、妥協が必要だったりするような本物の差異は存在しない。公共の場は、限られた人…

リキッド・モダニティ: 個人

オーウェルとハックスリーによる未来予測は、一方は荒廃と貧困、他方は富と浪費を描いたものであったが、厳しい統制社会に対する不安という点でヴィジョンは一致していた。そこでは、私的自由がゼロになるだけでなく、命令や規則に従順な人間から自由が憎ま…

アメリカのデモクラシー 第一巻(下): 7章、8章

合衆国における多数の全能とその帰結について アメリカでは多数派が力をもっている。これは民主政治の本質に由来する。また、アメリカでは立法部の構成員は選挙によって直接選出され、その任期も短い。立法権が多数者に従う傾向は法律によって強化されている…

アメリカのデモクラシー 第一巻(下): アメリカ社会が民主政治から引き出す真の利益は何か

民主制はそれ自体として最善の政治制度ではない。民主制の弱点や弊害には目がいきやすいが、その利点はみえにくい。トクヴィルは、アメリカ人が民主制からどんな利益を引き出しているのかを描こうとしている。 民主制のもとで、人民は権利を配分されることで…

アメリカのデモクラシー 第一巻(下): 合衆国の政治的結社について

アメリカのデモクラシー〈第1巻(下)〉 (岩波文庫)作者: トクヴィル,Alexis de Tocqueville,松本礼二出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/12/16メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 21回この商品を含むブログ (31件) を見る 第2部第4章に結社についての言及…

リキッド・モダニティ: 解放

人間のおこないを邪魔するあらゆるものから人間を「解放」し、自由を獲得することが近代の大きな目標だった。自由は獲得されたが解放は終わっていない。今日の個人は「形式上の個人」であって「事実上の個人」ではないためである。前者が後者へと変わるため…

軽量で液体的であること

リキッド・モダニティ―液状化する社会作者: ジークムントバウマン,Zygmunt Bauman,森田典正出版社/メーカー: 大月書店発売日: 2001/06/01メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 82回この商品を含むブログ (38件) を見る バウマンは物質の状態として、液体や気…

アメリカのデモクラシー 第一巻(上)

アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)作者: トクヴィル,松本礼二出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2005/11/16メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 50回この商品を含むブログ (82件) を見る 序文によると、本書が書かれたとき、アメリカとヨーロッパ…