孤独なボウリング: それで?

 それで、社会関係資本は何の役に立つのか?社会関係資本は、(1)社会的ジレンマの解決、(2)取引コストの節約、(3)他者への共感、他者からの承認の源泉、(4)情報の伝達、などにおいて効果を発揮する。より具体的には、アメリカにおける高社会関係資本州では、教育や地域生活は健全なものとなり、経済的発展についても期待をもつことができる。また、高社会関係資本州に住む人は健康や幸福といった点でも恩恵を受けており、さらに伝統的な差別に対して批判的な考えをもっている。低社会関係資本州ではこれと反対の事実が観測され、結果、社会関係資本と上記の諸指標との間には高度な相関が存在する。


 『孤独なボウリング』第4部をかなりおおざっぱにまとめると、だいたいこのようになる。州を単位としたアグリゲート・レベルの分析だからか、社会関係資本と各指標との相関係数は0.6〜0.8と、社会科学のデータ分析としてはかなり高い数値になっている。これは州ごとの教育水準や貧困度といった要因をコントロールしても変わらないそうだ。各章における個別の議論は読書会の場にゆずるとして、社会関係資本の測定について少し。『孤独なボウリング』では14の指標に対して主成分分析が施され、「社会関係資本指標」が一因子構造をもつことが示されている。もしパットナムの試みを日本で追試する場合、同じような一因子構造をもつ尺度を構成できるかどうかが、ひとつの鍵になるように思える。また、アグリゲート・レベル(日本の場合、都道府県単位)では一因子構造が成立していても、個人レベルでは多次元的な構造をもっているかもしれない。やってみないとどうなるかはわからないが、アメリカとはかなり違う結果になるということもあるかもしれない。