インターネットの利用タイプと社会関係資本の生成

Shah, Dhavan V., Nojin Kwak and R. Lance Holbert, 2001, 
"'Connecting' and 'Disconnecting' With Civic Life: 
Patterns of Internet Use and the Production of Social Capital," 
Political Communication, 18(2): 141-162.

 インターネットの利用と社会関係資本の関係については、これまでにインターネットの利用が対面的接触や市民参加を減少させ、さらには個人の抑うつ感や孤独感を増加させるといったことが明らかにされている。しかしながら、この論文の著者らは、既存の研究ではインターネットの利用があまりにも一面的にとらえられてきた点を批判する。インターネットの利用目的は多様であり、その目的に応じて、社会関係資本の増加あるいは減少にあたえる影響も異なるだろうと主張する。

 Shahらは社会関係資本の三側面――コミュニティ参加、一般的信頼、生活満足感に着目する。社会関係資本の「善循環」としての参加と信頼は集合的な問題解決に向けての基盤となる。生活満足は民主主義の安定にとって重要な要素である。このような社会関係資本の諸側面に影響を及ぼしうるインターネットの利用については、11項目の利用目的から因子分析によって4つの因子を抽出している。それぞれの因子には「買い物」(本、衣服、ビデオ、音楽の購入)、「情報交換」(興味のあることや趣味について調べる、学校や教育に関する情報を探す、Eメールの送信)、「財政管理」(バンキング、株の取り扱い)、「気晴らし」(ゲーム、チャット)と名づけられている。

 デモグラフィックな要因と他のメディア利用を統制した重回帰分析の結果を見ると、「情報交換」利用がコミュニティ参加と信頼に正の、「財務管理」が生活満足に正の効果をもっている。世代に分けて分析をおこなうと、社会関係資本の規定要因に世代による違いがあり、インターネットの効果は、もっとも若いX世代において顕著なものとして観測される。

 以上より、Shahらは社会関係資本にとってインターネットが無条件に危険だと考えるのは不適切で、ユーザーが利用中にインターネットで「何を」しているのかに焦点を当てることが、インターネットと市民生活、さらには民主主義との結びつきについて理解するうえで必要になると論じている。


 世代ごとの分析結果で、とくにX世代で「気晴らし」利用が社会関係資本にマイナスの影響をあたえているというのが少し意外だった。ゲームやチャットへの参加はコミュニケーション的な側面が強く、社会関係資本とは正の相関がありそうだからだ。ただ、ネット上の対人関係に費やす時間が増えると、対面的接触が少なくなるというのは、まあそうかなという気もする。他者と連絡をとったり市民活動についての情報を集めたりするツールとしてインターネットを利用することは、市民参加につながるネット利用の形態だろう。インターネットという空間において新しく人間関係を築いたり、義務や協同の規範を学んだりすることが(もしあるとしたら)、オフラインの生活にどんな影響をもたらすかは今後注目すべき点だろう。