インターネットの利用は社会関係資本に影響するのか

Wellman, Barry, Anabel Q. Haase, James Witte and Keith Hampton, 2001, 
"Does the Internet Increase, Decrease, or Supplement Social Capital? 
Social Networks, Participation, and Community Commitment," 
American Behavioral Scientist, 45(3): 436-455.

 インターネットの社会関係資本に対する影響については、インターネットがこれまでの生活を劇的に変化させ、社会関係資本を増大させるという見方と、同様の変化が社会関係資本の減少につながるという見方がある。Wellmanらは、こうした見方から少し距離をとり、インターネットは既存の社会関係資本を補うような働きをするのではないかと考えている。すなわち、インターネットの利用は、すでに存在する紐帯を維持するのにもっとも効果的だという、補充効果への着目である。

 データでは、Eメールの利用が、家族や友人との関係維持に一役買っていることが示されている。また、インターネットの利用目的としては同時的な利用と非同時的な利用のふたつがあり、そのいずれもが、オンライン、オフライン双方の組織参加や政治参加をうながす働きをもっている。ただし、オンライン・コミュニティへの関与に対しては、インターネットを多く利用する人ほど、関与が弱まるという関係が明らかになる。これについてWellmanらは、インターネット利用が増えるほど、ネット上で広がった弱い紐帯との接触によって、不快な経験をすることが多くなり、オンライン・コミュニティへの関与が低下する可能性があると解釈している。


 データの制約上、インターネットの利用が社会関係資本に及ぼす影響のメカニズムについては不明な点もあるが、ネット利用の同時性、非同時性といった点は参考になる。ただ、まとめの部分で書かれている社会的利用、非社会的利用という分類のほうが、社会関係資本との関連では議論しやすいと思う。

 本文中に「オンラインの組織参加」、「オンラインの政治参加」といった気になるワードが出てくるが、どんな変数から尺度化しているのかわからない。注を読むと「ホームページを見よ」と書いてあるのでアクセスしてみたが、トップページに飛ばされただけだった。論文中で使った変数については、質問や回答選択肢を明示してもらいたいものだ。