アメリカのデモクラシー 第一巻(下): 合衆国の政治的結社について

アメリカのデモクラシー〈第1巻(下)〉 (岩波文庫)

アメリカのデモクラシー〈第1巻(下)〉 (岩波文庫)

 第2部第4章に結社についての言及がある。

 合衆国の住民は困ったことがあるとき、社会的権威には頼らず自分たちでなんとかしようとする。結社の目的は多岐にわたり数も無数にある。

 合衆国では、公安、通商、道楽そして宗教のために結社がつくられる。諸個人が力を合わせて自由に活動することでは達成できない、と人間精神があきらめるようなことは何一つない。(p. 39)


 結社が政治にもたらす結果は次のようなものだ。第一に、ある意見についての賛同者が知り合うことで熱意がます。個々ばらばらな活動が束ねられ目標が明確になる。第二に、集会を開くことで活動の拠点ができる。活動拠点を中心に参加者は直接話し合い、諸々の活動手段が考え出される。第三に、同じ意見の賛同者は占拠母体を形成し、その意見を代表する代議員を任命する。

 結社はただ意見を述べるだけではなく、その考えを実行しようとする可能性がある。政治権力と変わらないだけの威信をもつ少数派や、そうした少数派に影響を受けた不満分子が秩序を危険にさらす、ということは起こりうる。この意味で結社には否定的な面がある。それでもなお、結社には固有の特長があり、そのひとつが、少数派にとって、結社は多数の暴政に抵抗する手段になるという点である。

 党派的専制や君主の恣意を妨げるのに、社会状態が民主的な国ほど結社が必要な国はない……。貴族制の国民では、二次的な団体が権力の濫用を抑制する自然の結社を形成している。このような結社が存在しない国で、もし私人がこれに似た何かを人為的、一時的につくりえないとすれば、もはやいかなる種類の暴政に対しても防波堤は見当たらず、大国の人民も一握りの叛徒、一人の人間によってやすやすと制圧されるだろう。(p. 44)